七年前、浅草の浅草寺に家族で初詣に出かけた時の話です。
元旦という事もあり、仲見世通りは人でごったがえしており、イモ洗い場状態でした。
当時三歳の娘は当然自力で歩ける状態ではなかったので、だっこをして何とか本殿までた
どり着きました。賽銭箱の前で賽銭を投げようとした瞬間、耳元で「パチン」と大きな音
がしたかと思うと、娘が大声で泣き出しました。最初は何が起こったのか解かりませんで
したが、娘の額を見て、後方から飛んできた賽銭が額に当たったのだと解かりました。額
の一部が赤く腫れていました。その場から離れ、境内の角に避難しました。
そこへ娘の泣き声に気付いた40代位のご婦人が近づいてきて、「お嬢ちゃん、どうした
の?」とやさしく声を掛けてくれました。娘は一瞬「きょとん」として、泣き止みました
が、またすぐに泣き出しました。それを見て、「お嬢ちゃん、ちょっと待っててね」と
言って、人混みに消えたかと思うと、すぐに戻ってきました。そして「お嬢ちゃん、どう
ぞ」と鈴の付いたおもちゃ(でんでん太鼓)を差し出してくれました。娘は泣き止み、笑
顔になりました。
下町の方の親切に触れて、心温まる一日でした。