私が小学生の頃の話。
自宅で家族全員でテレビを見ながら寛いでいた昼間の出来事です。
ふと気がつくと、まだ3歳になる前の弟の姿が見当たりません。
名前を呼んでも返事はなく、家中を探しても見つからない。
家族全員で近所を探しました。
2歳の子供が一人で行けると思われる場所を。
しかし、近所の公園や、ご近所の家を尋ねても何処にもいませんでした。
弟が戻ってくるかもしれないと家に祖父母を残し、両親と姉妹で範囲を広げて探すことにしました。
すると弟がいなくなった事を知ったご近所の人達が心配して集まってくれて
手分けして家族と一緒に弟を探してくれました。
暫く探した後、母が「もしかしたら駅前のスーパーかもしれない」と駅の方へと走り出しました。
駅前の大型スーパーは、踏切を越えた駅の反対側にあり、大人でも徒歩で15分は掛かるのに
2歳の子供が一人で行くはずがないと私は思いました。
走る母の後ろを追いかけてついていくと、道の向こうから小さな子供が一人、テクテクと歩いてきました。
弟でした。
手には、大事そうにお菓子の付いた車のオモチャを抱えていました。
「お店から持ってきちゃったの?」と私が聞くと
「おばちゃんがくれた (^^♪」とニコニコしていました。
たしかにオモチャには、会計が済んだ印のテープが貼ってありました。
誰かが買ってくれたものだと思いますが、
結局、何処の「おばちゃん」が買ってくれたのかは分かりませんでした。
きっと一人で冒険に出たものの、我に返った時に不安で泣いていたので、
優しい何処かの「おばちゃん」が買ってくれたのだと思います。
弟を連れて家に帰ると、一緒になって探してくれていた近所の人達も心配して待っていてくれました。
休日に車で行くことの多い駅前のスーパーですが、
平日に母と何度か歩いて買物に行っているうちに、弟は自然と道順を覚えていたのでしょう。
2歳の子供が一人で行ったことに大人達は皆、驚いていましたが、
自慢げな顔で嬉しそうにオモチャを見せて回る弟に気が抜けた様子で「良かったね」と微笑んでいました。
自分の家族でもないのに、心配して一緒に探してくれたご近所の人達や、オモチャを買ってくれた優しい「おばちゃん」に家族みんなが感謝した一日でした。